DCBA実験


DCBA : Drift Chamber Beta-ray Analyze

二重ベータ崩壊実験において世界で唯一の飛跡型検出器
目的 : ニュートリノレス二重ベータ崩壊事象の発見
方法 : ドリフトチェンバーによる電子の飛跡を検出する。

ニュートリノの謎とシーソーメカニズム

ニュートリノは素粒子の中でも特異な存在であり、現在までに「弱い力以外の相互作用をしない」「質量が他の素粒子(標準理論の質量スケール)と比べて非常に小さい」ということが分かっていますが、その理由については未だに謎のままです。
それを証明する理論として「シーソーメカニズム」があります。これは簡単に言うと、「ニュートリノには右巻きのものと左巻きのものがあり、我々が観測している左巻きニュートリノは非常に小さいが右巻きのニュートリノが非常に大きいことで全体的に釣り合いが取れた形になっている」ということです。この理論が正しいと証明するためにはニュートリノが反粒子と粒子の区別のないマヨラナ粒子である必要があります。
これを証明するにはニュートリノ振動実験では難しいので、違う方法を使います。

ニュートリノレス二重ベータ崩壊

原子核に中性子が多いとき、原子核はより安定な核になるために中性子を陽子に変えて電子とニュートリノを放出します。これがベータ(マイナス)崩壊です。また、稀に二重ベータ崩壊(2νββモード)といって原子核中の二つの中性子がベータ崩壊する反応があります。このとき、原子核は二つの電子とニュートリノを放出します。
一方で、ニュートリノがマヨラナ粒子であれば、ニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊(0νββモード)が起きて二つの電子のみを放出します。この反応ではベータ崩壊と逆ベータ崩壊が同時に起こっており、結果としてこの事象を発見することが出来れば、ニュートリノがマヨラナ粒子であることの証明になるわけです。ではこの二つの崩壊モードをどうやって見分ければいいのでしょうか?

2νββモードと0νββモードの見分け方

2νββモードと0νββモードは放出されるベータ線のエネルギーを正しく測ることで見分けることが出来ます。何故なら、2νββモードではニュートリノにエネルギーを持って行かれるためエネルギー分布はなだらかな山形になりますが、0νββモードはそれがないのでQ値(崩壊前のエネルギー‐崩壊後のエネルギー)付近尖ったピークをつくります。このピークを見つけることが出来れば0νββモードの発見となります。
2νββモードも稀な現象ですが、0νββモードはそれ以上に極めて稀な現象です。そのため、検出にはバックグラウンド事象の低減と大量な崩壊ソースの保有能力が必要とされます。

世界の二重ベータ崩壊実験

他の二重ベータ崩壊探索実験として、GERDA, NEMO3, CANDLES , KamLAND-Zenなどがあります。これらの実験は蛍光・熱量計型と呼ばれるもので、理的な解析によって大量に得られたデータにカットをかけていくことで事象の発見を目指しています。それに対して我々のDCBA実験はベータ線の飛跡を検出するという方式を採っています。この方法ではZ軸に対する回転方向を見分けることで「ベータ線(電子)の粒子識別が可能であること」や飛跡を三次元的に再構成することで「二重ベータ崩壊に由来するベータ線であること」を確認することが出来ます。このような方法をとった二重ベータ崩壊実験は世界的にも珍しいため、他の実験では出すことが難しい結果(2本のベータ線の角度相関分布など)を提供することができます。

検出原理

まず電気信号を読み出すためのワイヤを縦 (PICKUP WIRE) 横 (ANODE WIRE)に張り、反対側に電場を作るためのワイヤ(CATHODE WIRE)を配置します。次に、ワイヤ間に不活性ガスと有機ガスの混合ガスを封入し、高電場と磁場を掛けた状態を作ります。そこにベータ線が侵入してくるとガス分子をイオン化し、電離した電子は陽極側に引き寄せられ、ワイヤ近傍の高電場で電子雪崩を起こします。これにより信号を取り出すことが出来るのです。電子はローレンツ力を受けて螺旋運動するため、得られた電気信号は横ワイヤでは円軌道を描き、縦ワイヤでは正弦波軌道を描きます。これらのデータから分岐点の再構成と運動量を計算することで、どのような事象が起きて検出された電子なのかということを確かめることが出来ます。

β線飛跡の検出原理

イベント例

DCBA実験とMTD実験

我々はニュートリノレス二重ベータ崩壊事象の発見を目標に研究を進めていますが、そのためには小さなところから始めて、この方法でも十分にやれることを世界にアピールしなければなりません。DCBA実験は検出器やデータ解析システムの開発と2νββモードの探索を目的としており、ここでは0νββモードを発見できる程度の性能を満たしていません。そのためには現在推定されている0νββモードの半減期1025年とニュートリノ振動実験における θ13の精密測定によって推定されているニュートリノの有効質量値50meVといった要件を満たさなければなりません。我々は高濃縮150Ndの崩壊ソースを30kg保有できる検出器を10台作ることで、この二つの要件を満たすことが出来ると考えています。これをMTD (Magnetic Tracking Detector)と名付け、将来的に国際実験として進めていくことを目指しています。

2016年にDCBA-T2.5の測定が終了し、データ解析を進めています。また、エネルギー分解能の向上を目指したDCBA-T3と崩壊ソースの保有量を1000倍に増量したMTD 1の開発を進めています。

将来計画

高エネルギー加速器研究機構にあるDCBA-T2.5

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