Lectures-講義

三者共通講義 素粒子パート 原子核パート 高エネルギーパート

三者共通講義

「ニュートリノ研究の展望」
井上邦雄(いのうえ くにお)先生 --- 東北大学・教授

e-mail:inoue@awa.tohoku.ac.jp
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軽いニュートリノ質量や宇宙の物質優勢といった素粒子研究・宇宙研究の重要な課題に対して、ニュートリノ振動実験やニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊探索実験が注目されており、今後数年の間に、多くのプロジェクトが実験を開始しようとしている。同時に、ニュートリノを利用した地球物理・原子炉モニターなどの分野も新しく根付いてきている。これらの発展について特に日本の研究を中心に解説し、将来を展望する。

素粒子パート

弦理論
「AdS/CFT 対応入門」
高柳匡(たかやなぎ ただし)先生 --- IPMU(数物連携宇宙研究機構)・准教授

e-mail:tadashi.takayanagi@ipmu.jp
本講義では、超弦理論において近年最も中心的なテーマであるAdS/CFT 対応に関して入門的な解説を行いたいと思う。超弦理論自体やD-braneやゲージ理論の基本的な事柄の説明なども含めながら、AdS/CFT 対応とは何なのか?どう役に立つのか?を具体的に解説したい。またこの対応が、ブラックホールのエントロピーの量子論的な理解を与えることも述べたい。さらにブラックホールのエントロピーの拡張とも考えられるエンタングルメント・エントロピーとそのAdS/CFTにおける理解にも触れたい。残った時間で、最近の話題としてAdS/CFT 対応の超伝導への応用について議論したい。

場の理論
「2次元共形場理論の境界状態」
石川洋(いしかわ ひろし)先生 --- 東北大学大学院理学研究科・准教授

e-mail:
共形場理論とは共形変換(局所的なスケール変換)のもとで不変な 場の理論のことです.境界のある2次元面上で定義された共形場理論は 弦理論や物性理論といった分野に応用されるとともに,それ自身,豊かな 構造を持っています.この講義では,場の理論の初歩を前提として, 境界のある場合の共形場理論の基礎的事項,特に共形不変な境界状態の 構成および分類について解説を行います.

現象論
「超対称性理論と暗黒物質」
濱口幸一(はまぐち こういち)先生 --- 東京大学・准教授

e-mail:hama@hep-th.phys.s.u-tokyo.ac.jp
素粒子の標準模型を超える物理の最有力候補の1つとして、超対称性理論があります。この講義では、超対称性理論について簡単に説明した後、それを標準模型に適用した超対称標準模型について解説し、特に暗黒物質に焦点を当てて最近のトピックを紹介する予定です。暗黒物質については、ここ1、2年、観測・実験が飛躍的に進んでいますので、出来るだけ、夏の学校開催時での最新の動向を踏まえてお話したいと思います。

原子核パート

「ストレンジネスが拓くエキゾチックな原子核の世界」
土手昭伸(どて あきのぶ)先生 --- 高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所・助教

e-mail:dote@post.kek.jp
原子核の世界は様々な方向に広がっている。その一つの方向に「ストレンジネス」がある。陽子と中性子からなる原子核は近年の研究によって多彩な姿を見せることが分かってきた。ストレンジクオークを含む粒子(Λ などのハイペロン、K-中間子)を新たに構成要素として持つ原子核(ハイパー核、K 中間子原子核)は、通常原子核にはない面白い性質を持つと期待される。これらストレンジ原子核の構造研究に用いられる理論的手法を紹介しつつ、このような原子核が持つエキゾチックな性質及びJ-PARC 等での関連実験をレビューしたい。

「高エネルギー衝突実験から探るQCD 相転移」
野中千穂(のなか ちほ)先生 --- 名古屋大学・助教

e-mail:nonaka@hken.phys.nagoya-u.ac.jp
クオーク・グルーオン・プラズマ(QGP)、そしてQCD 相転移現象の解明を目指し、一連の高エネルギー重イオン衝突実験が行われてきました。特に2000 年より米国ブルックヘブン国立研究所で稼働した世界初の衝突型加速器RHIC では強結合QGP という新しい知見を得るに至りました。さらに現在このRHIC よりもエネルギーが高いCERN・LHCからの実験結果が待たれているところです。ここでは一連の高エネルギー重イオン衝突実験結果が現象論の助けを借りてどのように理解できるのか、どのようにQCD 相転移の理解へと結びつくのかについて取り上げたいと思います。

「不安定核反応論の構築に向けて」
八尋正信(やひろ まさのぶ)先生 --- 九州大学・教授

e-mail:yahiro@phys.kyushu-u.ac.jp
理研のRIBF による不安核反応実験のデーターが豊富に、近い将来、出始める予定である。これによって、不安定核物理は飛躍的に発展するものと期待されている。この新しいデーターを精緻に解析するためには、信頼性の高い核反応論の構築が必要である。本講義では、散乱理論の基礎を復習した後、離散化チャネル結合法(CDCC 法)の定式化と理論的基礎について講義する。また、最近、定式化したグラウバー近似に基づく微視的不安定核反応論について説明する。

高エネルギーパート

「MEG実験と大統一理論」
森 俊則(もり としのり)先生 --- 東京大学 素粒子物理国際研究センター・教授

e-mail:mori@icepp.s.u-tokyo.ac.jp
CENTER素粒子の標準理論はあらゆる素粒子現象を精度良く記述する優れた理論であるが、暗黒物質の存在や粒子・反粒子の非対称性など、説明できないことも多い。この講義では、標準理論を中心に素粒子物理の基本的な考え方について概説した後、超対称大統一理論をフレーバーの破れを通してミューオンの崩壊から探ろうとする MEG実験について、実験技術なども含めて解説する。

「長基線ニュートリノ振動実験T2Kついに始動!」
中家 剛(なかや つよし)先生 --- 京都大学 理学研究科・准教授

e-mail:t.nakaya@scphys.kyoto-u.ac.jp
T2K実験は茨城県東海村にある大強度陽子加速器J-PARCでニュートリノビームを生成し、295km離れた岐阜県飛騨市神岡町にあるスーパーカミオカンデでニュートリノを検出し、ニュートリノ振動を世界最高感度で測定する実験である。T2Kは、実験草案が2000年に作られ、2004年に承認、2009年に実験装置がほぼ完成し、 2010年から本格的なデータ収集を開始した。講義ではT2K実験の目指すニュートリノ振動の物理を説明し、 T2Kで使われる種々の実験技術に関して紹介する。また、実験の経緯、現場の様子、国際協力の現状、大学院生の活躍についても紹介する。